短寿命なデジタルデバイスの「もったいない」

前回、前々回iPhoneの話をしてきましたが、Androidの方もストレージ容量が逼迫してきたことやスペックが追いつかず動作が遅い時があることから、新しい端末に刷新しました。中国ZTEのSIMフリースマホ、Blade V580です。
画面サイズは5.5インチなので、4インチのiPhone SEと比べると一回り以上大きく文字がとても読みやすいです。特にKindleの電子書籍が何時でも何処でも読める環境が必須な私にとって、5.5インチで読みやすくなったことはもちろんのこと、Kindleアプリの動作が前端末より早くなったこと、さらに、このBlade V580はKindleの書籍データファイルをSDカードに移すことが出来るようでストレージ容量を気にせず多くの書籍をダウンロードしておけることが大変助かるところです。
もちろん大画面のトレードオフで携帯性は良くなく、Yシャツの胸ポケットに入れると上部が飛び出る格好になります。私は4インチで小型のiPhone SEは電話やメール等のコミュニケーション用途、5.5インチで大型のBlade V580はKindleやネット閲覧等のビューワ用途に使い別けようと考えています。サイズ感は人それぞれ好みがあるところですが、個人的には1台持ちに絞るなら5インチ位が丁度よいのかな、と思います。

5.5インチのBlade V580(左)と4インチのiPhone SE(右)

このBlade V580、スペックはミドルエンドクラスで2016年春発売と比較的最近の機種でありながら、1万円前後程度で販売されています。希望小売価格は27,800円(税別)この価格ですらスペックに対してコスト・パフォーマンスが良い、と云われていた程です。
何故ここまで下落してしまったのか? SIMフリースマホ市場はMVNO(格安SIM、格安スマホ)の活況とAndroidデバイスの製造コスト低下で価格競争が激しくなっており、傍から見ていると消耗戦の様相です。中国Huawei(ファーウェイ)と台湾ASUS(エイスース)の2社がプロモーション展開もあり存在感を高めていますが、ZTEは出遅れてる印象です。そのため、コスト・リーダーシップ戦略で挽回を図っているのかもしれません。

Blade V580は同等の競合他社製品に比べて半額近い状況で、これだけ安いとなにかあるのでは?と思わずにはいられませんでしたが、実際に使ってみると1万円とは信じらない程の全く申し分ない製品です。私の前端末は同じZTEのg02(Blade S Lite)でしたが、さすがに2年以上前のローエンドに比べると動作が段違いに早く快適です。
値崩れを招いた要因として考えられるのは、Androidのバージョンが5.1のままアップデートされる予定のないことです。以前にもこのブログで触れたとおりAndroidのバージョンアップはメーカー次第で、大手キャリア経由で販売される端末も対応がまちまちです。ZTEはほとんどバージョンアップがなされていないことから、選択肢から外してしまっているユーザーも居るようです。この点、ライバルのHuaweiやASUSはバージョンアップに積極的です。特にHuaweiは堅実な製品でユーザーの支持を着々と集めてきている印象があり、同じ中国メーカーのZTEとしてはライバルの好調ぶりがもどかしいところでしょう。
ちなみに、ZTEは2014年にBlade Vec 4Gをリリースしましたが、当時SIMフリースマホが3Gのローエンドばかりだった中、LTE対応のミドルエンドということで注目されました。実は“実用的な”SIMフリースマホを世に送り出した先駆けでもあります。

デジタルデバイスはどんどん短寿命化しています。CPU、メモリ、OSやアプリが進化に追い付けないためです。パソコンやスマホで「物理的には問題なく動くのに、動作がモッサリしてきた」ことは、多くの人にとって新しい機種へ買い替える動機付けになっていることでしょう。短寿命化という点では、前述したAndroidのアップデートに対応できないこともその一つで、いずれはソフト的に使えないということになってしまいます。
私も物理的に壊れていないのに実用には厳しいパソコンやスマホが幾つか“眠っている”状態です。ネットラジオ専用機として活用しているものもありますが、一応まだ動くため「もったいない」と捨てられずにいます。

その点、Apple製品は、ハードではミドルエンド~ハイエンドのスペックで高価な代わりに比較的長期間の使用に耐えることや、ハード自体がしっかりしており物持ちの良い印象があります。そして、ソフトでは、一社提供ということからシステムが統合されており、比較的長いサポートも期待できます。
(前回、前々回はiPhoneに対し厳しいことを書きましたが)このようなこともApple製品の満足度が高い理由にあるのではないかと考えます。「せっかく買ったのに失敗した!」という後悔が他メーカーより少ない様に思います。私が持っているiPad(第3世代)は2012年のものですが、5年経った今でもディスプレイの綺麗さは変わらず、動作は若干モッサリな程度でまだまだ使えます(ただ、iOS9までのサポートとなるためソフト的には“打ち止め”になっており、今後非対応のアプリも増えてくると思われます)。

「計画的陳腐化」というマーケティング用語があります。企業側が意図的に製品を陳腐化することで短寿命化させて買い替えを促すことですが、パソコンやスマホはその展開例です。
半導体の性能と集積密度は18ヶ月ごとに倍増することを「ムーアの法則」という言葉で表現されますが、これが短寿命化に拍車を掛けています。

そもそも、現代社会はモノの大量消費が経済を支えている構造です。“モノからコトの消費”と言われ続けていますが、依然としてモノの大量消費が中心であることは明らかです。大量消費社会の問題点として、資源の枯渇やゴミの発生といった環境問題が挙げられます。昨今の異常気象も無縁ではなく、将来は一層深刻になるのではないかと心配してしまいます。
大量消費を前提とした情報化社会と環境問題の両立…非常に壮大で難解なテーマです。私達一人ひとりに出来ることは、なるべく長く大切に使う、リユースされるよう古物商に売る(美品で外箱や付属品が揃っていれば意外と高値で買い取ってくれる事もあります)、ネットオークションやフリーマーケットに出品する、処分時にリサイクルされるようにする、といったことで心掛けレベルになってしまうのかもしれません。
なお、リサイクルでは“都市鉱山”から東京オリンピック・パラリンピックのメダルを作る取り組みも注目されています(一方で都市鉱山を巡っては不適切・不正も問題も発生しているようです)。