“マッサージ”をめぐる法律問題

街中で“マッサージ店”を見かけることが増えました。手もみや整体のチェーン店はショッピングセンターや駅ナカにも出店していて定番化している感がありますし、中国・韓国・台湾・タイといったアジア系の“マッサージ店”は都市部の繁華街だけではなく郊外の駅前などでも見受けられます。弊事務所のある上野から御徒町にかけての繁華街にはアジア系の“マッサージ店”が多くあり、都内のみならず日本全国でも屈指の店舗数なのではないかと思われます。

あえて“マッサージ店”と表記しているのには理由があります。実は、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律には以下の様な条項があります。昔の法律なので「マツサージ」と「ツ」が大きい表記です。

第一条  医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

第十二条  何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法 (昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。

第一条によると「あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうを事業とするには、免許が必要」ということになります。また、第十二条には「柔道整復を業とする~」という但し書きがありますが、「接骨院」や「整骨院」では柔道整復師の有資格者によって各種施術が行われています。これらは法律で認められている医業類似行為(医療行為を業として行うその周辺の行為)です。

人体に影響することなので法令で色々な決まり事があるのですが、様々な見解や主張、思惑があり全体像を理解するのが大変です。非常にザックリ言ってしまうと、街中の“マッサージ店”は有資格者が施術する店と無資格者が施術する(していると思われる)店がある、というのが実態のようです。
近年、無資格者が施術する(していると思われる)店が急増していますが、法律上“マッサージ”と表現すること微妙であるため、「整体」「手もみ」「ボディケア」「リラクゼーション」「カイロプラクティック」「エステ」などと表記していることが多いようです。店舗のホームページでも「当店の施術はリラクゼーションが目的であり、医療行為や治療行為を目的とするものではありません」などといった記述が見受けられます。
法律上はこの様に複雑な問題を抱えていますが、心身のストレスやIT機器の利用による疲労などに加えて、健康意識の高まりや「モノ」から「コト」の消費、癒やし・安らぎへの欲求などを背景に“マッサージ店”への需要が高まっています。


“マッサージ”は施術者の技術レベル・施術方法、受ける側の体質・体調が複雑に絡み合い、“マッサージ”を受けた結果、身体が楽になった・ほぐれたなどと感じる、いわば「正解のない」サービスです。受ける側に合った施術だったか、満足を得られたかといった主観的で感覚的なところ次第であり、同じ店でも施術者によって評価が異なることもあります。
資格の有無はある意味で、受ける側にとっては関係ないと言えるかもしれません。無資格者が施術する(していると思われる)店で特にチェーン店は、店舗構えや広告宣伝といったマーケティング展開が功を奏し、高齢者向きではなく20代や30代にも敷居が低い様な印象を与えることがあります。
ただし、有資格者は人の体を施術するのに相応しい知識や技術を習得していることが、国家資格で担保されています。一方で無資格者は知識や技術がピンキリであり、人体への危険性が相対的に高い可能性がある、ということになるかと思います。国民生活センターの調査結果には、「法的な資格制度がない施術を受けて危害が発生したと明確に判別できる相談が少なくとも4割以上を占め、法的な資格制度に基づく施術の相談に比べて多いと考えられた」という言及もあります。

また、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうの有資格者、及び、整骨院や接骨院で受ける施術は、健康保険の対象となり、自己負担額が軽くなる場合があります。

施術以外の法律問題としては、アジア系“マッサージ店”の一部において、性風俗行為が行われていたり(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律=風営法、風適法)、不法滞在・不法就労者が働いていたり(出入国管理及び難民認定法=入管法)と、違法状態の可能性があることも指摘されています。

注意:本記載は記事投稿時点でのものです。最新の法令を必ずご確認下さい。本記載内容の完全な正確性は保証しかねます。