エステと美容医療をめぐる法律問題

前回は「“マッサージ”をめぐる法律問題」として“マッサージ”の背後にある複雑な法律事情をご紹介しましたが、今回は“マッサージ”と近しい「エステ(エステティックサロン)」と「美容医療(美容外科、美容皮膚科等)」について考えてみます。
ちなみに、“マッサージ”のうち無資格者が施術する(していると思われる)店の中では「エステ」と称している店もありますが、ここではエステの定番メニューである痩身(ダイエット)や脱毛といった施術を中心とする店を取り上げます。今回はエステ、美容医療ともに痩身に絞って見ていきます。

まず、エステについて。痩身のエステは店によって違いがありますが、大体は「脂肪やセルライトが付いている部分を機械や手で揉みほぐして柔らかくする」→「ラジオ波や超音波(キャビテーションなど)を発する機械を当てて脂肪の溶解や破壊を促す」→「ヒートマットで身体を温めたりEMSで筋肉運動を行って発汗を促し老廃物を体外に排出させる」というのが施術の流れです。
ただし、この施術は1回で効果が表れるというものではないことは多くなく、大きな効果を出すには回数を積むことが必要です。そのため、最初の段階で10回、20回などと複数回分の契約を店と結ぶことが多くなっています。

エステは人件費と機械費が掛かり、さらに大手の店では広告宣伝や店舗内装にもお金を掛けているため、施術料が高額です。1回当たり2,3万円になるような店もあり、それが複数回分だと何十万円にも及びます。さらに大手の店だと都度払いというシステムが少なく、ローンでの支払いが主流な様です。このため、高額なローンが大きな負担になってしまうという話がよくあります。
そして、エステティシャンに営業ノルマを課している様な店では、「より効果がある」「せっかくだから」などと追加の施術時間や施術内容を提案してくるところもあります。強引な勧誘がなされて、断れず渋々契約してしまった結果、当初考えていた以上に高額な支払いになってしまう、といったことが問題になってきました。

エステの施術のうち期間が1か月・金額が5万円を超えるものは「特定商取引法に関する法律(=特定商取引法)」における特定継続的役務(えきむ)提供に該当します。契約にあたっては、店側は法律で決められた書面を交付する必要があります。大手は独自の書式が、中小店舗は業界で統一された書式が使われているようですが、いずれも契約時にしっかり内容を確認することが大切です。
思いがけない契約をしてしまった場合は、前述の書面を受け取った日から8日間以内であれば、規定の方法で契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます。本来、契約を締結した以上は守られるべきですが、消費者保護として一定期間の無条件解除が認められています。
また、中途解約についても精算金の計算方法などが規定されています。

次に、美容医療です。エステと美容医療の違いは、医師が関与するか否かです。医師は国家試験や研修を通じて一定水準の知識と技術を満たしているため、エステより身体にリスクのある施術を行うことが出来るというわけです。
その典型がメスを使う脂肪吸引手術や脂肪溶解注射です。これらはエステでは行なえません。また、メスや注射を使わずエステと同様に機械で行う施術もあります。手術や注射のような痛みがほとんどなく、さらに、エステと比べて出力を上げているので効果が高いとされています。例えば「ウルトラアクセント」という機械は、脂肪細胞のみを選択的に破壊する超音波を使用しているため、他の細胞にも影響を及ぼすことから超音波の出力を控えていたこれまでの機械に比べて高い出力で効果的に脂肪細胞を破壊することが可能とされています。

この中でメスを使う脂肪吸引手術は最も効果があると言われていますが、手術後しばらく痛みや腫れを伴うことや、メスを入れることへの抵抗感が強く、最近では敬遠されているようです。
代わりに、脂肪溶解注射や機械を使う施術が人気となっていますが、即効性はあまりなく複数回通う必要があります。前述のウルトラアクセントの場合は、4~6回で効果が出るとされています。

美容医療はエステ以上に人件費や機械費が掛かります。また、健康保険の適用対象外で自費診療です。単純比較は出来ませんが、エステと同等かそれ以上の高額な費用を覚悟しなければなりません。

この様に、美容医療はエステと似て非なるところがありますが、これまで消費者保護の制度がありませんでした。しかし、トラブルが多発していることを受けて特定商取引法が改正され、2017年12月1日以降の契約で期間が1か月・金額が5万円を超えるものは、エステと同様に法律で決められた書面の交付の義務化及びクーリング・オフと中途解約の適用がなされることとなりました。

エステにしろ、美容医療にしろ、効果には“個人差”があります。年齢や体質、生活様式など施術以外の様々な要因が影響します。そのため、お金を掛けた割には効果があまり無かった、ということも考えられます。
また、これまで述べてきた様にエステも美容医療も非常に高額です。何十万円では効果があまり無かったけど、何百万円掛ければ効果がある、ということもあるかもしれませんが、不確実ですしお金が幾らあっても足りません。身の丈に合った予算の範囲内で留まる勇気も必要です。
エステと美容医療はコンプレックスを解消することが大きな目的となりますが、残念ながらそれに漬け込むような商法が横行しトラブルの絶えない業界です。甘い言葉に惑わされないことが大事です。日本人、特に若い女性は必要以上に体型を気にしすぎている、と言われています。「体型が全てではない」「少し不満があったとしても健康であることが一番」と思考を変えてみることも必要でしょう。
ちなみに筆者は男性ですが、痩身のエステと美容医療の両方の経験があり、ある程度の成果が出ました。ただし結果としてと言わざる負えません。私見ですが、大きな効果を出すには相当の時間とお金がないと難しいと感じました。

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