起業本は間違っている!? 法人設立の細かいけど重要なこと

仕事柄、起業関連の一般的な書籍(起業本)を10冊位は読みました。
恐れ多くも「起業本は間違っている!?」というタイトルですが、正確に言えば、(紙面の都合かと思いますが)記載が省略されていたり、端折ってあったり、ケースバイケースだったり、といったところで、記載内容や書類の有無で若干の相違がある様に見受けました。

起業しようと思っている方や、駆け出しの士業の方は、起業本を複数冊読むとかえって混乱してしまうのではないかと思います(私は混乱しました)。
今回は起業本によって相違が多い部分と実務上の注意点をご紹介します。

合同会社の設立で必要な印鑑証明書は誰で何枚?

登記申請手続き時に法務局へ提出するのは「代表社員の印鑑証明書を1枚」のみです(個人の場合)。
そのせいか、「取得が必要な印鑑証明書は代表社員の1枚」と書いてある起業本が見受けられます。社員が代表社員1人のみの1人会社を想定している起業本は尚更です。

しかし、定款には全社員の「印鑑証明書の住所と氏名」を記載する必要があります。
1人会社なら代表社員の印鑑証明書1枚で済みますが、社員が2人以上いる会社の場合、定款を作成する過程で全社員の印鑑証明書が必要になります。

そのため、定款作成前の段階で全社員が各々お住いの市区町村で印鑑証明書を取得します。
ただし、代表社員以外はあくまで定款作成時に必要なだけで、法務局に提出不要です。

結論:
法務局に提出するのは「代表社員の印鑑証明書1枚」。
ただし、定款作成時に「全社員の印鑑証明書」が必要なため、全社員の印鑑証明書各1枚を定款作成前に取得する

電子定款を公証役場で認証する時の委任状はペラ一枚ではない?

株式会社や一般社団法人などの定款を電子定款とする場合、電子署名済みPDFファイルを法務省の登記・供託オンライン申請システム「申請用総合ソフト」を使いオンライン申請後、公証役場で認証をしてもらうことになります。

公証役場に行く際の持参物は、起業本にも詳述されていますし、状況によってケースバイケースのところがあります(公証役場によっては手順や持参物が異なる場合がありますので、各公証役場のサイトを確認したり、電話で問い合わせをされることをお勧めします)。

しかし、起業本にはあまり書かれていない様なのですが、委任状はペラ1枚ではなく、電子定款を印刷して「委任状を表紙にして印刷した定款をとじたもの」を準備します。そして「委任状と同じ実印で契印(割印)」をする必要があります。
京橋公証役場のサイトに図解付きの説明が掲載されていますのでご参照下さい。
ホチキスどめし各ページに契印(割印) http://www.k-kosho.jp/h1z.html
袋綴じや製本テープの場合 http://www.k-kosho.jp/h1y.html

起業本の多くは紙の定款を前提にしており、電子定款は紹介程度に留まっている印象です。
これは、電子定款は印紙代4万円が不要になるというメリットの一方、必要機材や過程の煩雑さがあり一般の方が一回限りの会社設立では手間になる、ということが背景にあります。
行政書士、司法書士などの士業で電子定款に対応している所に依頼するのも良いでしょう。印紙代不要分4万円+αで、定款の内容も専門家が作ってくれますし、マルっと任せられると思います。

結論:
委任状はペラ1枚ではなく、委任状を表紙にして印刷した電子定款と一緒にとじる。委任状と同じ実印で契印(割印)をする。京橋公証役場のサイトを参照。

必要書類の有無が起業本によって微妙に違う!?

起業本には「登記に必要な書類のチェックリスト」などと一覧表や図解があり便利なのですが、書籍によってリストアップされている書類が微妙に異なることがあります。

典型例が「資金の額の計上に関する証明書(資本金の額が会社法及び会社計算規則に従って計上されたことを証する書面)」。こちらは、簡単に言えば“設立時の出資が金銭のみの場合は不要、現物出資がある場合は必要”という添付書類です。
起業では金銭のみ出資の場合が多く、現物出資あり=「資金の額の計上に関する証明書」が必要、なことがどちらかと言えば少ないかと思います。

この点を触れず必要書類としてリストアップしている起業本が結構ある様に見受けました。「この場合は必要、この場合は不要」とすると話がややこしくなるため、単純化したいという著者や編集者の狙いがあるかもしれません。ただ、何冊か読んでいると「この本には書いてあるけど、あの本には書いてない?」と混乱すること必至です。

必須ではない書類は余分にある分には構いませんが、その内容が誤っていると余計な手間にもなりかねません。
なお、書類の名称や内容は、法令や趣旨から外れていなければ問題ありません。

このあたりは、関連法令を熟知していないと難しいところです。
迷ったら、本家本元・法務省のサイトに掲載されている記載例PDFを参照しましょう。
商業・法人登記の申請書様式 http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html

結論:
最後は法務省の記載例PDFが拠りどころ。
注意:本記載は記事投稿時点でのものです。最新の法令を必ずご確認下さい。本記載内容の完全な正確性は保証しかねます。