建設業許可・経管の注意点…ハードルは下がりつつあるものの依然厳しい(前編)

税込500万円以上の建設工事には許可が必要

建設業では、金額が税込500万円以上の建設工事を請け負う場合に、都道府県知事や国土交通大臣の許可が必要です。
税込500万円未満の「軽微な工事」において許可は不要ですが、元請業者が下請業者へ発注する場合に許可業者であることを条件としたり、公共工事を受注する(建設業許可取得後に経営事項審査を受ける)ために、「軽微な工事」を扱う建設業者でも許可を取得するケースが見られます。

建設業許可は難易度高め

この建設業許可は煩雑で作成書類が多く、関係法令の十分な理解も求められるため、行政書士へ代理申請のご依頼が多い行政手続きとなっています。
私が行政書士として初めて経験した業務も建設業許可でした。

建設業許可は、許認可の中でも取得が難しい方と言われています。その理由として、建設業は他の製造業に比べて多額かつ受注型の産業であるため、規制によって一定のハードルを設けているからです。
建設業法第1条には以下のように記載されています。建設業許可で迷った時は、基本中の基本であるこの目的条項を振り返ると良いでしょう。

建設業法 第一条(目的)

建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

建設業許可の制度は複雑ですが、まず人的要件の「経営業務の管理責任者」「専任技術者」が出発点になります。前者は「経管(けいかん)」、後者は「専技(せんぎ)」と略して呼ばれることもあります。経管は経営の専門家、専技は技術の専門家、と言えるでしょう。
今回は、経管について前編、後編の2回に渡って掘り下げてみます。なお、個人事業ではなく法人を前提にします。

経管(経営業務の管理責任者)とは?

経管とは、「建設業の経営を総合的に管理した経験がある者」のことです。言い換えると「建設業の経営に裁量権がある人」ということになるでしょう。

建設業法第7条第1号では以下のように規定されており、政令等でさらに詳細・具体的な定めがあります。

建設業法 第七条(許可の基準)

国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
ロ 国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者
(以下略)

原則は役員5年以上

経管の原則要件は5年以上常勤の役員として経営経験があることです(建設業法第7条第1号イ)
役員(一般的な株式会社の場合は取締役)として商業登記されている、ことが重要です。添付書類として行政庁に提出する履歴事項全部証明書で確認されます。

経管に一番当てはまりやすい人としては「経営者=代表取締役(社長)」です。
もちろん、代表者である必要はないので、役員が複数名いる会社であれば「建設業の経営経験がある取締役」も経管になれます。
いずれにせよ、本当に経管に当たる人物なのかどうか確認書類の提出(新規申請の場合は大量)が求められますので、実態に即していることは必須です。

※「経管に準ずる地位」など建設業法第7条第1号ロについては、準備する書類が増え、審査も厳しく裁量的な判断になってくるため、ここではあえて「原則」としませんでした。今後投稿する続編で詳述する予定です。

5年のハードル

ところで、新しい会社などの場合、5年以上という長い年数が大きなハードルになってしまいます。
基本的に時が経つのを待つしかありませんが、外部から経管の要件を満たす人材(個人事業や他社で経管の経験がある等)を招聘するという手段も考えられます。

しかし、これは簡単なことではありません。常勤の役員に就く必要があるため、会社自体に大きな影響を与えるものです。
会社の権力関係や人間関係にも波及しかねないので、慎重に検討する必要があるでしょう。

経管が欠けた場合への備えを

このように「5年以上常勤の役員としての経営経験」は、かなり厳しいものと言えます。5年という時の経過、は如何ともし難いものです。
経管が1日でも欠けると建設業許可の要件を満たさないので取消になってしまい、事業や会社の存亡という事態にもなりかねません。

このため、経管が欠けた場合に対する備えが極めて重要になります。具体的には、経管となれる後継者を早めに取締役としておく、ことです。
また、建設業がメインではない会社や、グループ企業の子会社の場合、経管を考慮しない人事を行ったことで経管になれる人が居ない、という事態もありますので、経管を念頭に置いた人事が必要です。

万が一、この備えが至らず経管が欠けてしまった場合は、前述したように外部から経管の要件を満たす人材を招聘するか(1日の空白も許されないため急な場合は困難)、建設業を廃業し(廃業届の提出)無許可業者になるしかないと考えられます(「建設業を廃業」といってもあくまで法律上の「建設業」であり、「軽微な工事」であれば請け負えます)。

注意:本記載は記事投稿時点でのものです。最新の法令を必ずご確認下さい。本記載内容の完全な正確性は保証しかねます。